2025.01.31
キャンプブーム、サウナブームは終わったのか
ある日、友人と久しぶりに会ったときのこと。彼は以前、毎週のようにサウナに通い、SNSにもサウナ投稿を欠かさなかった。最近のおすすめを聞いてみると、「あんまり行ってないんだよね」と苦笑い。「今は行きたい時に行くぐらい」と言う。
別の友人も、以前は週末ごとにキャンプに出かけていたが、今は「年に2〜3回、気心の知れた仲間とだけ行く」と言う。「前みたいに毎週行かなきゃって感じじゃない」と続けた。
この「行かなきゃ」と「行きたい時に行く」の違いは大きい。自分自身も似たような感覚がある。熱狂がひと段落し、習慣としてのフェーズに移ったように思う。
コロナ禍で長く自宅に縛られた反動から、自然や身体を解放できるレジャーに人が流れ込んだ時期があった。キャンプもサウナも、その受け皿になった。終息宣言から2年以上経ち、必要以上に語られることは減った。代わりに、多くの人の生活に静かに入り込んだ。ブームではなく習慣として、それぞれにとって「ちょうどいい距離感」が定まってきたのではないか。実際、その間に新しい顧客層は取り込まれていた。
サウナを見ても、都市型施設の乱立や差別化が進む一方で、あえて過度な演出を避け、ベーシックな体験を丁寧に提供する施設が増えている。キャンプなら、アウトドアギアを日常のインテリアに取り入れたり、庭先やベランダでちょっとしたキャンプ気分を楽しむマイクロキャンプのスタイルも定着しつつある。表面的なブームの後に、暮らしの一部として残る形が少しずつ見えてきた。
ブランド側も、その変化に応じている。Snow Peakは郊外で自社キャンプ場を運営するだけでなく、オフィス向けのアウトドア空間提案にも力を入れている。実際、パナソニックや資生堂のオフィスではSnow Peakのテントや焚火台が会議室や社員のリフレッシュスペースに導入されている。都心にいながら自然を感じる場をつくり、働き方そのものを設計し直す取り組みだ。こうした動きは、ただ道具を売るのではなく、「人と自然の距離感そのものを再設計する」ブランドの姿勢をよく示している。
ローカルの宿泊施設や小規模なサウナ運営者も、たんなる観光コンテンツ・サウナコンテンツとしてではなく、「土地の空気や時間を味わう器」としてのサウナ提供や運営に変化しつつある。
キャンプやサウナの「ブーム」は確かに終わったと言える。
むしろ以前より騒がれなくなったことで、以前からのコア層と新しくハマった層が残り、ライト層の生活にも形を変えて静かに定着した。表面的な話題が落ち着いた今のほうが、本質に近いと言えるのかもしれない。
焚き火の前に座っていると、これがブームや流行だけで括れるものではないことがよくわかる。火がそこにあるだけで、満たされる。不思議な静けさがある。サウナも同じで、あのプロセスの中で神経や細胞が整い、雑念が剥がれ落ち、思考が澄んでいく。
ブームの後に何が残り、何が残らなかったのか。これからも静かに、丁寧に観察していきたい。