コラム

COLUMN:

銀嶺の世界とバックカントリー

バックカントリースノーボードには、ゲレンデで滑るのとは違う独特の魅力がある。未整備の自然の地形。自分の脚で登り、自分の判断でラインを見極めて滑る。雄大な自然や緊張感が体験の密度を高めてくれているように思う。

そもそも、なぜわざわざ雪山に行くのだろうか。あらめて整理してみる。

まずは圧倒的に美しく、雄大な白銀の山嶺。澄んだ空気。緑鮮やかな夏山とも違い、雪に覆われた冬山は「生物や植物の気配」が極端に薄い。もちろん、山に入る人の総数も少ない。

音も匂いも雪に吸い込まれ、沢に入れば無音に近い恐怖を感じる瞬間もある。風の微妙な動きや雪を踏む足音が、自然の輪郭を教えてくれる。

ドロップ、ターン、スプレーが上がる瞬間、スティープな斜面、タイトなツリーラン、地形でのオーリー。瞬間的にアドレナリンが出るのが分かる。ピーカンでメンツルな日に良い滑りができた日は、アドレナリンの影響で寝れなくなることもある。

車中や登りの時間も良い。友人と他愛もない話をしながら登り、斜面の向きや天気や雪の具合を確認する。時間をかけて辿り着いた極上の一本を滑り切ったときの達成感は、短時間で消費される娯楽とは性質が全く違う。

大量にカロリーを消費した帰り道、地域の町中華やローカル焼肉、温かいラーメンが驚くほど美味しい。冷え切った体で入る熱い温泉も、他に代えがたい幸せがある。

もちろん雪山にはリスクもある。雪崩、遭難、怪我。バックカントリーは自然の中にお邪魔させてもらう行為だ。僕自身、山岳保険に入り、ココヘリなどのサービスも利用しているが、事前にどれだけ装備や知識や準備をしても、リスクがゼロになることはない。その前提を受け入れたうえで、慎重に判断し続ける必要がある。

前週や前日までの降り方や晴れ方、気温の変化などを鑑みて雪崩のリスクを考える。ローカルへの連絡や、メンバーとの相談。行くか、行かないか。行く場合はどの山が最適か。どの面がリスクが少なそうか。時間やメンバー、天候などによるさまざまな変数の中で判断する。

これらの「判断」は、抽象化して捉えると都市生活や仕事にも意外と応用できる場面が多い。

それでも、僕はBCをおすすめしたい。キャンプやサウナ、フットサルやゴルフでも得られない特別な感覚が、バックカントリーにはある。自然と対峙し、自分の身体と判断力を信じ、仲間と時間を共有する。

銀嶺の中で過ごす数時間は、日常のノイズを静かに削ぎ落とし、自分が何者で、どこに立っているのかを思い出させてくれる。稜線の上でする深い呼吸と、アドレナリンの感覚、そして仲間との時間は他に代え難いのである。

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