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デザイナー視点で捉える D2C 企業の特徴

— “世界観を売る” ビジネスの設計図 —

D2C は「メーカー直販モデル」とひと言で片付けられがちですが、実態は ブランド体験をゼロから自分たちで設計できる“デザイン集約型”ビジネス です。ロゴやUIはもちろん、梱包テープ・配送体験・コミュニティ運営までをワンストップでコントロールできるからこそ、デザイナーの意思決定がそのまま売上・LTV・ロイヤルティに直結します。

この記事では、急成長ブランドの事例を織り交ぜながら 「D2C のコア構造」と「デザイナーが担うべき役割」 を整理しています。

1. ブランドをゼロから“全栈”で組み上げる

D2Cは小売りの中抜きを狙うモデルというより、ブランド体験のすべてを自社でデザインする仕組みであるといえます。Nike が Amazon を利用することを辞めて自社アプリへ誘導した例のように、ロゴやUIだけでなく配送箱のテープ1本まで統一トーンに揃え、顧客体験を囲い込みます。これにより価格競争ではなく“世界観競争”へシフトでき、高い粗利とロイヤルティを同時に確保できます。​

2. データ×コミュニティで高速PDCA

D2Cブランドはサイトやアプリで取った一次データを即座にプロダクト改善へ反映します。リピート率を上げるサブスク設計、A/Bテストを回すマイクロコピー、UIのミクロな調整までデザイナーが手を動かしやすいのが特徴。EMARKETER は「D2C売上はEC全体の14.9%で頭打ち」と予測しますが、だからこそデータ駆動のリテンション設計が差を生むフェーズに入っています。​

3. “配送もプロダクト”という発想

2025年のD2Cフルフィルメントはハイパーパーソナライゼーションとサステナビリティがキーワード。都市型マイクロ倉庫で翌日配送を担保しつつ、再利用可能な梱包材でCO₂を削減するなど、物流体験そのものがブランド価値になります。ここで活きるのがパッケージングの設計力──開封前からSNS映えする色設計や可変レイアウトはデザイナーの腕の見せ所です。​

4. ソーシャルコマース&ライブコマースの“映え”競争

TikTok Shop や Instagram Live でのライブ販売は体験そのものがUI。ビフォーアフター動画が爆速でバズれば、在庫が1日で消えることも珍しくありません。裏を返せば在庫と制作の同期が取れなければ炎上リスクも高い。短尺動画で“製品の使い心地を5秒で伝えるレイアウト”や“コメント欄に溶け込むCTAボタン”など、インタラクション設計力が売上直結の時代です。​

5. オムニチャネル回帰とリテール2.0

広告費の高騰でCAC(顧客獲得コスト)が跳ね上がり、ポップアップや卸とのハイブリッドに再び光が当たっています。物理空間を持つ意味はブランディングだけでなく、返品受付・体験型イベント・配送コスト削減など多層的。空間デザインでは「可変什器+スマホ連動」でオンライン在庫とリンクさせるなど、UI/UXとインテリアの融合が求められます。​


まとめ

D2Cの本質は「製造〜配送〜コミュニティ運営」までをデザインという思考で一気通貫させること。成⻑が踊り場に来たいま、UIやビジュアルの“見た目”だけでなく、データパイプラインや物流、ライブ配信の舞台裏までデザイナーが設計対象に入り込むかどうかが、次の勝敗を分けるポイントです。