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“つくるか、率いるか”で揺れるデザイナーたち

Figma や生成 AIの普及で、ひとりのデザイナーが出せる生産量はここ数年で急増しました。
同時に、組織は 「高度な専門性を突き詰める IC(Individual Contributor)」「チームを束ねる Manager」 の両軸でキャリアラダーを整備し始めています。

  • UX Design Leader Survey 2024 では、回答したリーダーの 63 %が「IC↔Mgr を行き来した/検討した」と回答。​LinkedIn
  • Medium の 2024 年人気記事では「IC でも報酬上限を突破できるが市場ニーズと学習負荷が壁」との声が多数挙がりました。​Medium

本稿は「どちらにも存在する難しさ」を整理し、選択のヒントを示します。


1. キャリア構造をざっくり図解

貢献軸

│ ┌──────────┐
│ │ Director │ ← 組織経営
│ └──────────┘
│ ┌──────┐ ┌──────────┐
│ │ Lead │ │ Manager │ ← 目標/KPI責任
│ └──────┘ └──────────┘
│ ┌──────┐
│ │ Sr.IC │ ← 深度/品質責任
│ └──────┘
│───┴─────────────────────────→ 時間
  • IC ルート:シニア → プリンシパル → フェロー
  • Mgr ルート:ピープルマネジャー → デザインディレクター → VP/CXO


2. 難しさを対比する5つの観点

観点IC(専門職)Mgr(マネジメント)
市場リスク尖ったスキルが陳腐化すると報酬も急落
➡ “学習投資”を止めにくい
ピープルマネジメントは業界横展開可だが
裁量縮小で報酬頭打ちになる企業も
成長痛“案件全集中”で視野が狭くなるデザイン実務から遠ざかり
“手を動かせない”焦り
評価の曖昧さ直近アウトプット次第で高低差が大きい事業KPI とクリエイティブ品質の板挟み
メンタル負荷「自分だけの専門性」で勝負=孤独感“人・予算・政治”を背負う対人ストレス
跳躍の壁組織が小さいとプリンシパル職が存在しない規模拡大に依存。降格しにくいぶん
“ダメMgr”の烙印が重い


3. 典型的なつまずきポイント

IC 停滞パターン

  1. 学習コストの息切れ
  2. 同種案件のループでポートフォリオが単調化
  3. 意思決定層から遠く“仕様の末端作業者”化

Manager 疲弊パターン

  1. 会議・予算管理で“作る楽しさ”が霧散
  2. 部下を育てる時間<火消し・採用交渉
  3. デザイン品質とP/L責任のトレードオフ地獄


4. “選択のヒント”3ステップ

ステップ質問例目安
① 自己充足分析「週40hのうち何hを手を動かす時間に割きたい?」20h以上ならIC向き
② インパクト想像「10人チームを育て年1億円のARRを伸ばす vs. 自分の設計でNPS+15pt」どちらにゾクゾクする?前者→Mgr、後者→IC
③ スキルアセット棚卸エキスパート領域が2つ以上あるか?
コーチング経験はあるか?
前者強→IC深化、後者強→Mgr挑戦


5. IC・Mgr どちらでも効く“共通武器”

  1. ビジネス言語:財務指標・PMF・OKR を自分のデザイン成果と接続する力
  2. コーチングスキル:Peer Review や Pair Design で学習と再現性を両立
  3. 生成AI リテラシー:プロンプト設計で制作/管理コストともに圧縮

McKinsey の 2024 年調査でも、デザインを重視する企業は売上成長率が平均 2 倍との結果。IC でも Mgr でも、ビジネス価値に直結できるデザイナーは依然“希少資源”です。​LinkedIn


まとめ

  • IC の難しさ=“専門性を掘り続ける孤独と市場変化リスク”
  • Mgr の難しさ=“人・予算・政治を背負う多軸ストレス”

どちらも “難しい” 領域が異なるだけで、優劣ではない
キャリア選択は「毎日どんなストレスを抱えたいか」を自問する作業に近い。

最後に:IC ↔ Mgr の行き来は増えています。キャリアを“片道切符”と思わず、**定期的に「どちらが今の自分に合うか」**をリフレームし続けることが、長期戦を勝ち抜く最大の秘訣です。