2025.02.28
“つくるか、率いるか”で揺れるデザイナーたち
Figma や生成 AIの普及で、ひとりのデザイナーが出せる生産量はここ数年で急増しました。
同時に、組織は 「高度な専門性を突き詰める IC(Individual Contributor)」 と 「チームを束ねる Manager」 の両軸でキャリアラダーを整備し始めています。
- UX Design Leader Survey 2024 では、回答したリーダーの 63 %が「IC↔Mgr を行き来した/検討した」と回答。LinkedIn
- Medium の 2024 年人気記事では「IC でも報酬上限を突破できるが市場ニーズと学習負荷が壁」との声が多数挙がりました。Medium
本稿は「どちらにも存在する難しさ」を整理し、選択のヒントを示します。
1. キャリア構造をざっくり図解
貢献軸
↑
│ ┌──────────┐
│ │ Director │ ← 組織経営
│ └──────────┘
│ ┌──────┐ ┌──────────┐
│ │ Lead │ │ Manager │ ← 目標/KPI責任
│ └──────┘ └──────────┘
│ ┌──────┐
│ │ Sr.IC │ ← 深度/品質責任
│ └──────┘
│───┴─────────────────────────→ 時間
- IC ルート:シニア → プリンシパル → フェロー
- Mgr ルート:ピープルマネジャー → デザインディレクター → VP/CXO
2. 難しさを対比する5つの観点
観点 | IC(専門職) | Mgr(マネジメント) |
---|---|---|
市場リスク | 尖ったスキルが陳腐化すると報酬も急落 ➡ “学習投資”を止めにくい | ピープルマネジメントは業界横展開可だが 裁量縮小で報酬頭打ちになる企業も |
成長痛 | “案件全集中”で視野が狭くなる | デザイン実務から遠ざかり “手を動かせない”焦り |
評価の曖昧さ | 直近アウトプット次第で高低差が大きい | 事業KPI とクリエイティブ品質の板挟み |
メンタル負荷 | 「自分だけの専門性」で勝負=孤独感 | “人・予算・政治”を背負う対人ストレス |
跳躍の壁 | 組織が小さいとプリンシパル職が存在しない | 規模拡大に依存。降格しにくいぶん “ダメMgr”の烙印が重い |
3. 典型的なつまずきポイント
IC 停滞パターン
- 学習コストの息切れ
- 同種案件のループでポートフォリオが単調化
- 意思決定層から遠く“仕様の末端作業者”化
Manager 疲弊パターン
- 会議・予算管理で“作る楽しさ”が霧散
- 部下を育てる時間<火消し・採用交渉
- デザイン品質とP/L責任のトレードオフ地獄
4. “選択のヒント”3ステップ
ステップ | 質問例 | 目安 |
---|---|---|
① 自己充足分析 | 「週40hのうち何hを手を動かす時間に割きたい?」 | 20h以上ならIC向き |
② インパクト想像 | 「10人チームを育て年1億円のARRを伸ばす vs. 自分の設計でNPS+15pt」どちらにゾクゾクする? | 前者→Mgr、後者→IC |
③ スキルアセット棚卸 | エキスパート領域が2つ以上あるか? コーチング経験はあるか? | 前者強→IC深化、後者強→Mgr挑戦 |
5. IC・Mgr どちらでも効く“共通武器”
- ビジネス言語:財務指標・PMF・OKR を自分のデザイン成果と接続する力
- コーチングスキル:Peer Review や Pair Design で学習と再現性を両立
- 生成AI リテラシー:プロンプト設計で制作/管理コストともに圧縮
McKinsey の 2024 年調査でも、デザインを重視する企業は売上成長率が平均 2 倍との結果。IC でも Mgr でも、ビジネス価値に直結できるデザイナーは依然“希少資源”です。LinkedIn
まとめ
- IC の難しさ=“専門性を掘り続ける孤独と市場変化リスク”
- Mgr の難しさ=“人・予算・政治を背負う多軸ストレス”
どちらも “難しい” 領域が異なるだけで、優劣ではない。
キャリア選択は「毎日どんなストレスを抱えたいか」を自問する作業に近い。
最後に:IC ↔ Mgr の行き来は増えています。キャリアを“片道切符”と思わず、**定期的に「どちらが今の自分に合うか」**をリフレームし続けることが、長期戦を勝ち抜く最大の秘訣です。