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「デザイン思考は終わったのか?」が問われるワケ

2023〜25 年にかけ、象徴的な出来事が相次ぎました。

  • IDEO が世界拠点の約3分の1を閉鎖し、従業員を 32 % 削減──CEO 自ら「デザイン思考の時代が終わる」と述べた人員整理は業界に衝撃を与えました。​Fast Company
  • 2025 年3月、P&G・Ford など大企業の CDO が集まったシンポジウムのテーマはズバリ “Is Design Dead?”──企業が「デザインの席」を縮小し始めた現実を共有する場となりました。​Fast Company

こうしたニュースを背景に、「デザイン思考はもう古いのか?」という論争が再燃しています。本稿では “終焉説”の根拠・誤解・そして次の進化形 を3つの視点で整理したいと思います。

1. 過熱から揺り戻しへ──“終焉説”が生まれた3つの理由

シグナル具体例影響
① イノベーション・シアター化“付箋ワークショップ”が量産され成果が見えない──「手法だけ消費」への批判が増加。​MB CollabDT=表層的というレッテル貼りが横行
② 組織のコスト最適化フェーズJ&J・IBM などが CDO 職を廃止、デザイン部門を縮小。​Fast Companyデザインが「守るべき領域」より「削れるコスト」に
③ AI・PLG(プロダクト主導成長)の台頭生成AIと計測可能なプロダクト指標重視で、“定性→定量”シフトが加速HCD 系プロセスの相対的プレゼンス低下


2. それでも消えないデザインの価値

  1. 複雑系の可視化フレーム
    • ジェンダー、気候変動、AI倫理──数値だけでは語れない多因子問題を構造化するツールとして DT は依然有効。
  2. 組織学習とマインドセット転換
    • IDEO 退職者が指摘するように「“作る前に顧客に会う”文化」は企業内に残り、開発の習慣を変えた遺産は健在。
  3. “システム思考 × DT” のハイブリッド化
    • スタンフォード d.school の最新講座は DT を基盤に システム思考・ストーリーテリングを接続する内容へアップデート。​Stanford d.school


3. ポスト・デザイン思考の5つのキーワード

キーワード概要デザイナー/組織のアクション
Systems Design経済・環境・社会要因を俯瞰する設計因果ループ図・システムダイアグラムを標準ツールに
Evidence‑Based DT実験設計・A/B テストで定性→定量を往復UX リサーチとデータサイエンスのクロス職種育成
Co‑Design / Equity‑Centered Design影響を受ける当事者を“共作者”にリードユーザーを報酬付きでプロジェクトチームへ招く
Generative AI Orchestrationプロトタイピングを AI に委任し、人間は意味編集を担う“Prompt Playbook”とブランドトークンのリアルタイム連携
Regenerative DesignESG を超えて“環境を再生する”視点カーボン負債ゼロ→プラス転換を KPI に組み込む


まとめ — “終わる”のではなく“脱皮”する

デザイン思考は 「万能ワークショップキット」としては寿命を迎えつつあります。しかし、

  • ユーザー起点で課題を再定義する力
  • プロトタイプを軸に学習ループを回す力

というコアは、AI・システム思考・サステナビリティと結び付くことで より高解像度の問題解決エンジンへと進化中です。

結論:デザイン思考は終焉ではなく“次世代 OS へのアップグレード期”。
むしろ今こそ、数値と感性を橋渡しする “デザイン×戦略” ハイブリッド人材が求められています。