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外へ出る/ととのうブームは本当に一段落したのか?

コロナ禍で 3 密を避けられるレジャーとしてキャンプが、ストレス軽減・健康志向の高まりとメディア露出でサウナが――2020 年前後から日本の余暇市場を席巻しました。ところが 2024〜25 年に入り、アウトドア大手の業績急ブレーキやサウナ施設の閉店報道が目立ち始め、「ブームはピークアウトしたのでは?」という声も聞こえてきます。ここでは、ブームの盛り上がりと衰退を考察したいと思います。

1. どうしてここまで盛り上がったのか

ブーム主なドライバー補足
キャンプ・コロナ下で密を避けられるレジャー
・YouTube/SNSによる“ギア沼”拡散
・メーカーのライト層向けギア投下とグランピング施設拡充
2020 年にキャンプ人口が前年比 34 %増(環境省統計)
サウナ・TVドラマ『サ道』(2019) や「サウナシュラン」受賞施設のバズ
・“ととのう”体験の可視化(心拍計/サ活投稿)
・女性専用・個室サウナなど新業態
2023 年時点で都内個室サウナは推定150店舗超(業界団体調べ)

デザイン視点メモ:両市場とも“体験を記号化”し、SNS でシェアしやすいビジュアルを伴ったことが爆発力を生んだと考えられる。


2. 失速を示すファクト & シグナル

2‑1 キャンプ:コロナ特需の反動と在庫の山

企業・指標21 → 24 年度の変化背景
スノーピーク純利益‑99.9 % 減(23 年決算)コロナ特需後の在庫膨張と値引き競争 ビジネスインサイダー日本
WILD‑1事業売上‑18.3 % 減(24/2 期)需要反動減でアウトドア用品が伸び悩み Frontier Eyes Online by フロンティア・マネジメント
スポーツ量販各社のアウトドア部門24 年に 10〜17 % 減収ゴルフ・キャンプ用品が軒並み反動減 FULL KAITEN(フルカイテン)

2‑2 サウナ:供給過多と固定費インフレ

事象具体例ソース
個室サウナの閉店増「都内は供給過多で淘汰へ」と業界関係者分析note(ノート)
老舗銭湯サウナの廃業光熱費高騰で閉店相次ぐ現実を業界コンサルが指摘ダイヤモンド・オンライン
入館料の値上げ草加健康センターが 25 年1月から料金改定湯乃泉 健康センター

固定費の罠:サウナはヒーター稼働・水風呂維持など可変費より固定費が重いため、電気代高騰が直撃。


3. ブーム終焉? ─ 4つの仮説

仮説概要今後の注目点
① 生活必需から“贅沢品”への揺り戻し物価高でレジャー予算が絞られる→安価レジャーへ回帰キャンプ場利用料・サウナ入館料の価格弾力性
② 体験の“コモディティ化”施設・ギアが急増し差別化困難
→どこも同じ感でリピート低下
ブランドごとのCX(コミュニティ設計/サービス拡張)の質
③ サステナブル転換の遅れ大量消費型ギア・エネルギー多消費施設への批判強まるリユースギア市場や再エネ活用サウナの伸長
④ “マイクロニッチ”への細分化ブーム母集団が解体→
 ・ガレージブランド×UL(超軽量)キャンプ
 ・“ととのう旅”×地方サウナツーリズム
SNS でのハッシュタグ分布/小規模事業者の伸び

4. ビジネスへの示唆

  1. 量より“深度”のKPIへ
    • 新規客数→LTV/来場単価/二次消費を追う設計に。
  2. 体験デザインの再定義
    • キャンプ:サイト設計×アクティビティ(焚火/サウナテント)<br> – サウナ:熱源・水質・休憩動線まで“一筆書き”で演出。
  3. 脱・物販/入・サービス化
    • ギアサブスク、サウナワーケーション、リトリートパッケージなど“所有→利用”モデルで収益多層化。
  4. コスト構造の可視化と共有
    • 光熱費や環境負荷データを開示し、価格改定を“納得感”あるストーリーに。


まとめ

キャンプもサウナも**“体験を媒介にしたライフスタイル提案”**で急拡大しましたが、量的拡大が一巡した今、

  • キャンプ業界は在庫と価格競争
  • サウナ業界は固定費と供給過多

という構造課題が顕在化しています。ブームが終わったというより、“成長の質”が問われるフェーズに入った、と捉えるべきでしょう。

今後は 「ユーザーコミュニティの熱量 × サステナビリティ × 体験設計」 を軸に、市場を再編できるプレイヤーが次の主導権を握ると考えられます。